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第3回 細胞診とHPV検査の違いは?

かゆ子先生の最新情報シリーズ「子宮頸がん予防に関わる最新検査技術とその複雑化する事情」

どちらの検査も子宮頸部(子宮口の入り口の部分)の粘膜から直接細胞を採取するところまでは同じですが、細胞診が採取した細胞を顕微鏡の下で直接観察して細胞に異常がないかどうか確認する方法であるのに対して、HPV検査は子宮頸がんを誘発する可能性のあるHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染の有無を検査する方法です。
子宮頸部細胞診検査は数あるがん検診方法の中で最も一般的に行われているもので、その有効性は高く評価されています。細胞診では、子宮頸部から採取された細胞を顕微鏡の下で観察し、異常がないか確認すると説明しましたが、そのため、細胞診の検査結果は、細胞の種類やその異型性(形態の異常の程度のこと)によって分類され、その分類に応じてその後の医学的な対応が決まります。
細胞に異常が生じてから「がん」化するまで10年程度かかると言われていますが、子宮頸がんでは多くの場合、一気に「がん」化してしまうのではなく、少しずつ異常の程度が増して、それが最終的に細胞の見た目に表れてきます。その異型度の度合いや細胞の種類を見て、細胞診の結果の分類を行っているのです。異常の程度によっては一目でがんと分かるものもあれば、正常な細胞と区別しにくいものもあり、異常の度合いが軽いほど治療できる可能性が高くなります。細胞診は、このように、早い段階で将来的に「がん」化する可能性を見つけ出し、対応することによって未然にがんの発症を予防することに役立っているのです。
一方、HPV検査はHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染を調べる検査ですが、HPVに感染しているというだけでは必ずしもがんになっているかどうかは分かりません。また、がんにはなっていなくても、HPVに感染していることが分かれば、将来病変が進行したり、もしかすると子宮頸がんになるかもしれない、という予測が可能になります。
まとめると、HPV検査が将来的な「がん」化する可能性をウイルスの感染に基づいて判断するのに対して、細胞診は将来的に「がん」に進展する可能性のある細胞を早い段階で見つけ出し、適切な処置をするために有効な検査なのです。

以上のことを考え合わせると、理論的には、この2つの異なった目的の検査を適切に組み合わせて行うのが最良の方法ということになりますし、細胞診とHPV 検査を併用することで、より正確な判定ができる可能性があるかもしれないという議論が日本でも高まっています 。
しかし、もしこの2種類の検査両方を毎年行うとすると、経済的にも、身体的にも大きな負担となってしまいます。また、子宮頸がんは「がん」化の進行も比較的ゆっくりしたものですから、検査と検査の期間を適切に空けることが重要です。
ではこれらの有用な2種類の検査方法をどのように利用すればいいのでしょうか?
それは次回お話ししたいと思います。
細胞診による子宮頸がん検診は、死亡率・罹患率の減少が既に証明されている非常に効果の高い方法です。
通常、検診の有効性は長年にわたり蓄積されたデータから、それがどれだけ死亡率・罹患率の減少につながっているかによって証明されます。始まって40年にもなる子宮頸がん検診は、その有効性が明確に証明されている非常に数少ない検診法なのです。